Ganjapa

「Ganjapa」と呼ばれるインドのオリッサ州(英語: Odisha、旧名称の英語: Orissa)の伝統的なプレイングカードです。
前回紹介した「Mughal Ganjifa」の一種ではあるのですが、オリッサ州ではインドの他の地域とはかなり異なる発展を遂げました。

基本的にはスートの種類やカードの枚数は変わりませんが、コートカードの大臣は叙事詩『マハーバーラタ』(Mahābhārata)の英雄アルジュナ(Arjuna)、王はクリシュナ(Krishna)の化身で9種の動物からなる生き物 Navagunjara に置き換えられています。


Ganjapa


Ganjapa


Ganjapa


Ganjapa

上記の画像では上段左から「金貨」、「手形」、「布」、「ハープ」、下段左から「銀貨」、「クラウン」、「奴隷」、「剣」の順に並べています。

追記:
「Ganjapa」だけでなく、他の地域の「Mughal Ganjifa」についても言えることですが、スートの数が8ではなく、10や12などのデッキも存在するようです。その場合も、各スートが1~10の数札と2枚のコートカードで成り立っている点は変わりません。

Mughal Ganjifa

「Ganjifa」と呼ばれるインドの伝統的なプレイングカードの一種です。

起源は不明ですが、今日知られている「Ganjifa」はペルシャで始まったと考えられ、16世紀のムガル皇帝の下でインドで人気を博しました。宮廷では宝石や象牙などの貴重な材料を用いた贅沢なカードデッキが作られたようです。
ゲームは後に一般の人々にも広まり、木材やヤシの葉、硬い布などの材料を用いてカードデッキが作られました。

「Ganjifa」には地域などによって様々なバリエーションがありますが、「Mughal Ganjifa」はペルシャで使用された元のパターンに最も近いタイプであると考えられています。ただし、カードを円形としたのはインドのオリジナルです。
「金貨」、「手形」、「商品(布)」、「ハープ」、「銀貨」、「クラウン」、「奴隷」、「剣」をシンボルとする8つのスートで構成され、それぞれ1~10の数札と2枚のコートカード(大臣、王)が揃っています。


Mughal Ganjifa


Mughal Ganjifa


Mughal Ganjifa


Mughal Ganjifa


Mughal Ganjifa

上記の画像では上段左から「金貨」、「手形」、「商品(布)」、「ハープ」、下段左から「銀貨」、「クラウン」、「奴隷」、「剣」の順に並べています。
上段の4スートは「Kambar suits」と呼ばれ、数札は数字が大きいほど強く、下段の4スートは「Bishbar suits」と呼ばれ、数札は数字が小さいほど強いというルールとなっています。

追記:
ペルシャから伝わったプレイングカードを円形にしたのはインドのオリジナルですが、円形のプレイングカードを世界で最初に作成したのがインドだという意味ではありません。
円形の Ganjifa が普及したのは19世紀以降のようですが、以前に紹介した「Karten Spiel des Meisters PW」のように、ヨーロッパにもそれより前から円形のプレイングカードは存在します。

追記2:
インドのガンジファ(Ganjifa)もヨーロッパのプレイングカードも共に、トルコのマムルークカード(Mamluk cards)を祖先とするのではないかと考えられているようです。
ムガル帝国の “Mughal” はモンゴル(Mongol)を意味しますが、彼らは11世紀にペルシャに侵入したトルコ人の子孫であり、およそ200年後にモンゴルによって同じ土地から追い出されました。

Tarocchi Bolognesi Armanino

Armanino というローマのカードメーカーによって1963年に発行されたボローニャ系タロットです。カードサイズは概ね 5cm x 10.5cmと小振りです。

ボローニャでは1725年に教会の意向により「Papessa:女教皇」と「Papa:教皇」の札をタロットデッキから除外することになり、「Imperatrice:女帝」と「Imperatore:皇帝」の札と併せて、描かれる人物がムーア人に置き換えられました。
更に、1760年頃から次第に双頭スタイルが主流となり、同時に大アルカナに記載される数字もローマ数字からアラビア数字へと変化しています。数字が振られているのは5~16のみで、数字と絵札の組み合わせもマルセイユ版タロットとは少し異なっています。


Bolognesi


Bolognesi


Bolognesi


Bolognesi

このようなボローニャのタロットデッキでは、最上位に位置するのは「Mondo:世界」ではなく、「Angelo:天使」(マルセイユ版タロットの「Giudizio:審判」に相当)です。
また、2~5が除外されている数札については、棒と剣のスートでは数字が大きいほど強く、杯と金貨のスートでは数字が小さいほど強いというルールとなっています。

Antichi Tarocchi Bolognesi

1780年にボローニャの Giacomo Zoni によって作成されたタロットデッキの復刻版です。発行元は Lo Scarabeo。

ここではボローニャ系タロットに分類しましたが、2~5の数札も揃っていて、ボローニャで作成されたマルセイユ系タロットと考えた方が妥当であるかもしれません。


Giacomo Zoni


Giacomo Zoni


Giacomo Zoni

フランスでコンヴェル版が作成されたのが1760年ですから、その少し後に作成されたことになりますが、こちらの方が古い印象を受けます。
色使いが地味なことも影響しているでしょうが、カード18(XVIII)の月の顔が正面を向いているなど、古いタイプのマルセイユ版タロットの特徴も見られます。

Tarocchi Fine dalla Torre

17世紀に作成されたボローニャのタロット「Tarocchi Fine Dalla Torre」の復刻版です。パリ国立図書館に保管されているオリジナル版を元に、ボローニャ近郊の Museo Internazionale dei Tarocchi によって作成されました。

オリジナル版のカードサイズは 4.3cm x 10.5cmと小振りですが、この復刻版では 7cm x 14.6cmとかなり大きくなっています。
また、現存しない6枚のカード(杯の女王、金貨の女王、剣の6~9)と本来はボローニャ系タロットには存在しない2~5の数札も加えられて、マルセイユ系タロットと同じ78枚となっています。


Fine dalla Torre


Fine dalla Torre


Fine dalla Torre


Fine dalla Torre


Fine dalla Torre


Fine dalla Torre


Fine dalla Torre

とても美しいタロットデッキですよね。この色合いがなんとも言えません。そう思いませんか?裏絵もなかなかお洒落です。もしかしたら、現在保有している中で一番好きなデッキかもしれません。

Tarocchino Mitelli Deck

Giuseppe Maria Mitelli によって1660年頃に作成されたタロットデッキの復刻版です。カードのサイズは概ね 5.9cm×12.2cmです。発行元は Lo Scarabeo。

「Tarocchino」というのはボローニャ系タロットのことです。「Tarocchini(tarocchino の複数形)」というゲームをするのに使用され、大アルカナ22枚、小アルカナがコートカード16枚、数札24枚の計62枚という構成となっています。数札の枚数が少ないのは、どのスートも2~5の札が取り除かれているためです。


Mitelli


Mitelli

Mitelli

Mitelli

このデッキでは、大アルカナに数字が記載されていません。その代わりというわけではないでしょうが、数札にスートのシンボルだけでなくローマ数字も小さく記載されています。

また、大アルカナの絵柄もかなり変わっています。例えば、一般的なデッキのカード9(VIIII)「隠者」に相当する札には松葉杖をついた「時の翁」が描かれ、カード12(XII)「吊された男」に相当する札には背後から撲殺されそうな「裏切り者」が描かれています。

Cego Spielkarte No.75

「Cego」と呼ばれるゲーム用タロットの一つです。「Cego」というゲームについてはほとんど知識がないのですが、カードとしては「Industrie und Glück」の変種であると考えてよいと思います。
先に紹介した「Adler-Cego」と同様に、大アルカナに記載されている数字はアラビア数字となっています。

このデッキは、Schmid というカードメーカーがミュンヘンで1960年~1965年に発行していたもので、Ludwig Richter の木版画がベースとなっているとのことです。


Cego


Cego


Cego


Cego

Feine Adler-Cego Nr.99

1950年頃にドイツのカードメーカー ASS によって発行された「Adler-Cego」と呼ばれるゲーム用タロットの一つです。

動物タロットの一種ではありますが、18世紀にドイツで誕生した動物タロットの仲間というよりは、「Industrie und Glück」の変種、あるいは両者のハイブリッドであると考えた方がよい気がします。
大アルカナ22枚、小アルカナがコートカード16枚、数札16枚の計54枚という構成となっています。また、双頭スタイルですが、愚者以外の大アルカナの札では上下で描かれている内容が異なっています。大アルカナに記載されている数字はアラビア数字となっています。


Adler-Cego


Adler-Cego


Adler-Cego


Adler-Cego

Taroky 165

前回に続き、こちらも「Industrie und Glück」と呼ばれるゲーム用タロットの一つです。Obchodni Tiskárny というカードメーカーが、プラハで1961年~1968年に発行していました。

全体的に前回紹介した「Kaffeehaus Tarock」とよく似た絵柄ですが、カードによっては少し異なっています。カード2(II)では、絵柄はそっくりですが、「Industrie und Glück」という碑文が削られています。


Taroky


Taroky


Taroky


Taroky

カード21(XXI)には三日月が描かれていますが、これは旧ハプスブルク君主国諸地域の北部で発行された「Industrie und Glück」に多く見られる特徴であるようです。

Kaffeehaus Tarock

Piatnik から「Kaffeehaus Tarock」の名で発行されているデッキも、「Industrie und Glück」と呼ばれるゲーム用タロットの一つです。
カードのサイズは概ね 7.4cm×12.8cmと少し大きめです。

大アルカナにはほのぼのとした農村風景が描かれていて、先に紹介した Joh. N. Hofmann によって作成されたデッキとは随分印象が異なりますが、「Industrie und Glück」と呼ばれるゲーム用タロットのほとんどはこちらのタイプです。カード2(II)に「Industrie und Glück」という碑文が描かれている点は共通しています。


Kaffeehaus


Kaffeehaus

Kaffeehaus

Kaffeehaus

追記:
上記のような農村風景が描かれるパターンは、1865年頃に確立されたようです。