Tarocchi Bambini

イタリアの画家、エマニュエル・ルザッティ(Emanuele Luzzati)のイラストが描かれた可愛らしいタロットデッキです。この色彩豊かで躍動感のあるイラストは、見ているだけで楽しくなってきますよね。

ルザッティは、イタロ・カルヴィーノ(Italo Calvino)が編集した『イタリア民話集』 (Fiabe Italiane) の挿絵とかも描いています。


Luzzati


Luzzati

大アルカナは、カード8(VIII)が「JUSTICE:正義」、カード11(XI)が「STRENGTH:力」となっています。

また、通常タロットに記載されるローマ数字には加算法方式が用いられますが、このデッキでは減算法方式が用いられています。例えば、「4」は加算法方式では「IIII」、減算法方式では「Ⅳ」(4 = 5 – 1)となります。

Antichi Tarocchi Marsigliesi

1760年にニコラ・コンヴェル(Nicolas Conver)によって作成された木版タロットの復刻版です。発行元は Lo Scarabeo。
以前は、コンヴェル版がマルセイユで作成された最古のマルセイユ版タロットだと考えられていました。

現在確認できる範囲では、1736年に作成されたフランソワ・シャッソン(François Chosson)の版が最古であると考えられていて、コンヴェル版もこれをベースに作成されたのではないかと言われています。


Conver


Conver

この復刻版を見る限りでは、彩色がけっこう大雑把で、線画が塗りつぶされているといった感じですね。しかし、最近発行された別の復刻版では、かなり違っているみたいです。

追記:
コンヴェル版のカード7(VII)では「戦車」の前面に「V.T」のイニシャルが記載されています。これが何の略であるかはっきりとしていないのですが、「Veuve Toulon」というカードメーカーの略だという説が有力であるようです。

Ancien Tarot de Marseille

グリモー(Baptiste Paul Grimaud)が1930年に発売したこのタロットデッキが大きな成功を収めたことが、「マルセイユ版タロット」の名を世に広めました。

ポール・マルトー(Paul Marteau)がニコラ・コンヴェル(Nicolas Conver)の版をリメイクしたものだと言われていますが、ベースにしたのは「ブザンソン版」だったという説もあります。


Grimaud


Grimaud

伝統的なタロットの色使いを大きく変えてしまったと批判されることもありますが、今でもマルセイユ版タロットの代表的な存在であることは間違いありません。

ただ、個人的にも嫌いなデッキではないのですが、カード18(XVIII)「LA LUNE:月」だけはもう少しなんとかならなかったかと思ってしまいます。

追記:
使用する色数が減らされたのは、機械印刷が導入された当初の技術的な制約が原因であったようです。

i Tarocchi di Marsiglia

De Vecchi というイタリアの出版社から発行されたマルセイユ版タロットと解説書のセットです。カードのサイズは 8cm×16cmとかなり大きめです。


De Vecchi


De Vecchi


De Vecchi


De Vecchi

カード12(XII)の「吊された男」は、縛られているのは片足だけですが、「Tarocco Classic」やスイスで発行されたマルセイユ版タロットに描かれた両足を縛られた「吊された男」とよく似ています。
また、杯のエースに花が生けられているのは、ピエモンテ系タロットの影響だと思われます。

追記:
私は保有していませんが、Il Meneghello によって作成された「Classico Tarocco di Marsiglia」という復刻版タロットの絵柄と類似しているみたいです。

Tarocco di Marsiglia Svizerra (22 Major Arcana)

こちらは Il Meneghello によって作成された復刻版タロットの一つです。ベースとなっているのは、Jean Proche が1804年にスイスで発行したマルセイユ版タロットだということです。


Swiss


Swiss

先に紹介した「Tarocco Classic」と同様に、カード12(XII)で「吊された男」が両足を縛られ、横を向いた状態で描かれています。
「Tarocco Classic」は Claude Burdel の復刻版だと言われていますが、むしろこちらのタロットとの類似点の方が多いですね。

追記:
このタロットのカード7(VII)では「戦車」の前面に「JR」のイニシャルが記載されていて、元となる版の制作者は Jacques Rochias であると考えられています。
(Claude Burdel の版には「CB」のイニシャルが記載されています。また、「Tarocco Classic」ではイニシャルは記載されていません。)

追記2:
両足を縛られた「吊された男」のカードは、ケイトリン・ジョフロイ(Catelin Geofroy)のデッキからコピーされたのではないかと考えられているようです。1557年にリヨンで発行された、現存するフランス最古のタロットデッキです。ただし、マルセイユ版タロットとは異なる点が多いです。

Tarocco Classic

このタロットデッキは、Claude Burdel によって作成された木版タロット(1751年)の復刻版という設定になっていますが、実際にはオリジナルと異なる部分が少なくないようです。


Classic


Classic

全体的に絵がちょっと雑というか、素人っぽい感じがしますね。色使いもかなり独特です。

特に目を引くのが、カード12(XII)で「吊された男」が両足を縛られ、横を向いた状態で描かれている点です。
Claude Burdel のオリジナルも含め、通常は縛られているのは片足だけで、もう片方の足が四の字のように交わっています。また、顔も正面を向いています。

Les Tarots du Destin

詳細は分かりませんが、外箱やタロットの裏絵に有翼のスフィンクスが描かれたこのデッキは、1940-50年頃にパリで発行されたものだということです。


Destin


Destin


Destin

パリで発行されたとしても、愚者が蝶を追いかけている等の特徴から、双頭スタイルのピエモンテ系タロットであると言ってよいでしょう。

また、78枚のカード全てにアラビア数字とローマ数字で連番が振られています。これについては、「エッティラ版」の影響であるように思われますが、どうでしょうか?

Tarocchi Piemontesi c.1904 Armanino Genova

ピエモンテ系タロットは、1860年代以降は双頭スタイルが主流となってきます。

タロットの持つ象徴的な面をいくぶん損なっても、上下を気にしないで済むという利便性の方が勝ったということなんでしょうか?
例えばカード21「Il Mondo:世界」を見ると、本来表示されるべき「四つの生き物」の内、天使と鷲しか表示されてないです。


Geniva


Geniva


Geniva

双頭スタイルのピエモンテ系タロットに共通する特徴として、次のような点が挙げられます。

・愚者のカードで、愚者が蝶を追いかけている。
・杯のエースで、杯に花が生けられている。

いずれもこれまでに紹介した単頭スタイルのピエモンテ系タロットには見られなかった特徴です。

ただし、私はまだ保有していませんが、単頭スタイルのピエモンテ系タロットの中には、上記の特徴を備えたデッキも一部存在します。
おそらくは、そうしたデッキが双頭スタイルのピエモンテ系タロットのベースとなったのでしょう。

追記:
双頭スタイルと呼ばれるデッキにおいても、数札については単頭スタイルのデッキと変わりません。
カードの上部を反転させて下部ににつなぎ合わせるという改修は、大アルカナと小アルカナの宮廷カードにのみ施されています。

追記2:
双頭スタイルのピエモンテ系タロットのベースとなったのは、Vergnano のタロット(1830年頃)であると推測されます。

Tarocchi Piemontesi MIDY

こちらは MIDY という製薬会社のノベルティとして1963年に配布されたタロットで、なんと18.5㎝×36㎝という大きさです!

ベースとなっているのは、1800年代初期にミラノで発行された単頭スタイルのピエモンテ系タロットで、Tarocchino Milanese と呼ばれることもあるようです。

 

 

 

 

先に紹介したピエモンテ系タロットがマルセイユ版タロット「タイプ II 」に準じていたのに対して、「タイプ I」の特徴を有しています。でも。愚者に絡んでいるのは犬ですね。

追記:
ベースになったのは Teodoro Dotti によって発行されたデッキのようです。

追記2:
ミラノはロンバルディア州の州都です。(ピエモンテ州の州都はトリノ)
ここではピエモンテ系タロットという分類に含めていますが、ロンバルディのタロットとして分類されることもあります。
また、ミラノ版タロットと言った場合には、古典的なタロットである「ヴィスコンティ版」を意味することが多いみたいです。

追記3:
ミラノで「Tarocchini(tarocchino の複数形)」というゲームをするのに使用されたため、「Tarocchino Milanese」と呼ばれたみたいです。
「Tarocchini」はボローニャ地域で人気のトリックテイキングゲームで、ボローニャ系タロットのカードが62枚に減少していることとも関係ありそうです。

Le Tarot Noir

こちらはフランスのデザイナー Matthieu Hackiere によって制作されたタロットデッキです。

マルセイユ版に準拠はしていますが、どこか悪夢を想わせるような、シュールな世界観が表現されています。カードのサイズもかなり大きくて(概ね10.5㎝×14㎝)、基本的には観賞用だと言って良いでしょう。


 Noir


 Noir


 Noir


 Noir


 Noir

カード18(XVIII)「LA LUNE:月」を眺めていたら、初期の Macintosh でプレイしたイタチョコシステムのゲーム「野犬ロデム」が思い起こされました。(..といっても、このゲームを知ってる方は少ないでしょうね。)