Virgil Solis

ニュルンベルクの Virgil Solis によって、1544年に作成された銅版画プレイングカードの復刻版です。

現存するフランス最古のタロットデッキである Catelin Geofroy のデッキの小アルカナ部分は、このプレイングカードを模したものであると考えられています。


Solis


Solis

Solis

Solis

Solis

猿、孔雀、オウム、ライオンをシンボルとする4つのスートで構成され、それぞれ1~10の数札と3枚のコートカード(ネイヴ、女王、王)が揃っています。猿と孔雀のコートカードでは人物が右向き、オウムとライオンのコートカードでは人物が左向きとなっています。

Karten Spiel des Meisters PW

1500年頃にドイツで作成された円形の銅版画プレイングカードの復刻版です。オリジナル版は、「PW」の署名によって知られるケルンのプレイングカードマスターによって作成されました。おそらくは観賞用に作成されたものでしょう。

オウム、ウサギ、カーネーション、オダマキ、バラをシンボルとする5つのスートで構成され、それぞれ1~10の数札と4枚のコートカード(下官、上官、女王、王)が揃っています。また、これとは別に機能がよく分かっていない2枚のカードがあり、併せて72枚となります。


PW


PW


PW


PW


PW


PW

オウムはムーア人、ウサギはトルコ人、カーネーションはドイツ人、オダマキはスペイン人、バラはイギリス人を象徴していると考えられているようです。
特別な2枚のカードの内の1枚は「Title card」、もう1枚は「Memento mori card」と呼ばれています。「Memento mori」は、ラテン語で「自分がいつか必ず死ぬことを忘れるな」という意味の警句らしいです。

Tarocchi Sola Busca

1491年頃にミラノで作成され、ソラ・ブスカ家に伝わるタロットデッキの復刻版です。カードのサイズは概ね 7.7cm×14.5cmと大きめです。発行元は Lo Scarabeo。

オリジナル版は、現存するタロットとしては「ヴィスコンティ・スフォルツァ版」に次いで古く、78枚のカードが全て揃っていることが確認できたデッキとしては最古のものとなります。
(1465年頃に作成された「マンテーニャ・タロット」の方が古いのですが、通常はタロットとは別のものとして扱われています。)

大アルカナ22枚、小アルカナ56枚(= 14枚 × 4スート)という構成や、スートの種類(棒、杯、剣、金貨)は、現代の標準的なタロットデッキと同じです。
ただし、大アルカナの内容は全く異なっていて、描かれているのは古代ローマ人やバビロニアの王です。数札にも全て絵が描かれていて、ウェイト版タロットが作成された際に参考にされたという話も伝わっています。


Sola Busca


Sola Busca


Sola Busca


Sola Busca


Sola Busca


Sola Busca


Sola Busca

I Tarocchi del Mantegna

「マンテーニャ・タロット」と呼ばれるデッキの復刻版です。Il Meneghello によるハンドメイドで、とても味わい深い作品となっています。カードのサイズは概ね 9.5㎝×16.5㎝と大きめです。

オリジナル版は1465年頃に作成されましたが、作者は不明です。ちょっと紛らわしいですが、イタリア・ルネサンス期の著名な画家アンドレア・マンテーニャ(Andrea Mantegna)によって創作されたものではないようです。

マルセイユ版タロットに代表される現代の標準的なタロットデッキとは構成が全く異なるため、「タロット風デッキ」と呼ばれたりもします。具体的には、以下のような10枚毎の5つのグループで構成されています。

階級 グループの概要
E  1~10 人間の社会階級
D 11~20 アポローンと 9柱の女神
C 21~30 人文科学と自然科学
B 31~40  3つの普遍的原理(光、時間、空間)と 7つの徳
A 41~50  7惑星と天球

しかしながら、個々のカードを眺めると、マルセイユ版タロット等との類似性を強く感じさせるカードも少なくありません。


Mantegna


Mantegna


Mantegna


Mantegna


Mantegna


Mantegna

Ambraser Hofjagdspiel (The Courtly Hunt Cards)

1440年~1445年の間に作成されたと考えられているドイツのプレイングカード(トランプ)の復刻版です。発行元は Piatnik。
現存する最古のタロットである「ヴィスコンティ・スフォルツァ版」とほぼ同時期に作成されたオリジナル版は、56枚中54枚が現存しているとのことです。


Hofjagdspiel


Hofjagdspiel


Hofjagdspiel


Hofjagdspiel


Hofjagdspiel

カードのサイズは概ね 9.5㎝×15.5㎝とかなり大きいです。
鷹、鷺(サギ)、猟犬、ルアー(鷹狩りの訓練に用いる疑似餌)をシンボルとする4つのスートで構成され、それぞれ1~10の数札(10は旗)と4枚のコートカード(下官、上官、女王、王)が揃っています。

追記:
15世紀~16世紀のドイツのプレイングカードでは、多くの場合スートのシンボルはデッキのテーマによって決定され、非常にバラエティに富んでいます。

The Marziano Tarot

「ヴィスコンティ・スフォルツァ版」より前に作成されたけれど現存しないタロットデッキを、残された手紙に記述された内容などから Robert M Place が再生しました。

オリジナル版は、ミラノ公爵のフィリッポ・マリア・ヴィスコンティ(Filippo Maria Visconti)の命により、1412年~1425年の間に作成されたと考えられています。


Marziano


Marziano


Marziano


Marziano

大アルカナ(16枚)には、ギリシャ・ローマ神話の神々が描かれています。小アルカナは、鷲、フェニックス、コキジバト、鳩をシンボルとする4つのスートで構成され、それぞれ10枚の数札と女王と王が揃っています。併せて64枚のセットになります。

追記:
大アルカナに描かれた神々は以下のとおりです。

名称 カタカナ表記
I Giove ユピテル
II Giunone ユーノー(ユノー)
III Pallas パラス(アテナの別名)
IV Venus ウェヌス(ヴィーナス)
V Appolo アポローン(アポロン、アポロ)
VI Nettuno ネプトゥーヌス(ネプチューン)
VII Diana ディアーナ(ディアナ、ダイアナ)
VIII Bacco バッコス(バッカス)
IX Mercurio メルクリウス(マーキュリー)
X Marte マールス(マルス)
XI Vesta ウェスタ
XII Ceres ケーレス(ケレス)
XIII Ercole ヘーラクレース(ヘラクレス)
XIV Eolo アイオロス
XV Daphne ダプネー(ダフネ)
XVI Cupido クピードー(クピド、キューピッド)

追記2:
Robert M Place によって再生されたタロットデッキは、かなりポップな感じに仕上がってます。これはこれで気に入っているのですが、実際のオリジナル版は「ヴィスコンティ・スフォルツァ版」やドイツのプレイングカード「Ambraser Hofjagdspiel」のように、もう少し厳かな感じであったと思われます。また、おそらくカードのサイズももう少し大きかったでしょう。

追記3:
1425年は、フィリッポ・マリア・ヴィスコンティの娘、ビアンカ・マリア・ヴィスコンティ(Bianca Maria Visconti)が誕生した年です。オリジナル版は、彼女の誕生を祝う品々の一つであったと考えられます。

Ancien Tarot de Marseille (2)

グリモー版は以前にも一度掲載しましたが、それよりも古い版を入手したので改めてご紹介します。


Grimaud 2


Grimaud 2

1930年に発行されてから現在まで人気のタロットデッキで、何度も版を重ねた結果、色合いが多少変化しています。特に違いが目立つのが青系で、現在よりも薄く、空色に近い感じです。もしかしたら年月を経て色褪せただけなのかもしれませんが、個人的には古い版の色合いの方が好みです。

追記:
並べてみた方が違いがはっきりしますね。左が今回紹介した古い版、右が以前に紹介した現行に近い版のカードです。


Grimaud 2

Tarocchi Italiani di Gumppenberg

Gumppenberg によって1830年にミラノで発行されたタロットデッキの復刻版です。オリジナル版のデザイナーはカルロ・デラ・ロッカ(Carlo della Rocca)。


Gumppenberg


Gumppenberg

色使いは異なりますが、先に紹介した Teodoro Dotti のデッキとよく似た感じです。カードのサイズも 5.5cm×10.5cmとやはり小振りです。

オリジナル版は、発行された当時にかなり人気を博したデッキだったみたいです。もしかしたら、Dotti もこの成功にあやかろうとしたのかもしれませんね。

追記
1780年にボローニャで作成された「Antichi Tarocchi Bolognesi」の絵柄ともたいへんよく似ています。

Tarocco tradizionale italiano di 78 carte

Teodoro Dotti によって1845年にミラノで発行されたタロットデッキの復刻版です。(以前に紹介した MIDY のタロットのベースとなったデッキです。)

カードのサイズは 5cm×10cmとかなり小振りです。


Dotti


Dotti

本当に素朴な感じで、庶民がゲームに使用したんだろうなぁといった印象を受けます。

アイルランドの詩人で、イギリスの神秘主義秘密結社「黄金の夜明け団」のメンバーでもあったイェイツ(William Butler Yeats)も、Dotti のデッキのコピーを持っていたみたいです。

Les Tarots de Marseille Jean Dodal (major arcana only hand-stencilled)

Jean-Claude Flornoy によるジーン・ドダル(Jean Dodal)のタロットの復刻版です。ハンド・ステンシル(手塗り)で印刷された、とても味わい深い作品です。


Dodal


Dodal

オリジナル版は1701年頃にリヨンで制作されました。現在確認できるマルセイユ版タロットとしては、1650年頃にパリで制作されたジーン・ノブレ(Jean Noblet)の版に次ぐ古さとなります。

マルセイユ版タロット「タイプ I」の特徴を有していて、カード6(VI)の天使が目隠しをして、カード18(XVIII)の月の顔が正面を向いています。