Tarocchi Italiani di Gumppenberg

Gumppenberg によって1830年にミラノで発行されたタロットデッキの復刻版です。オリジナル版のデザイナーはカルロ・デラ・ロッカ(Carlo della Rocca)。


Gumppenberg


Gumppenberg

色使いは異なりますが、先に紹介した Teodoro Dotti のデッキとよく似た感じです。カードのサイズも 5.5cm×10.5cmとやはり小振りです。

オリジナル版は、発行された当時にかなり人気を博したデッキだったみたいです。もしかしたら、Dotti もこの成功にあやかろうとしたのかもしれませんね。

追記
1780年にボローニャで作成された「Antichi Tarocchi Bolognesi」の絵柄ともたいへんよく似ています。

Tarocco tradizionale italiano di 78 carte

Teodoro Dotti によって1845年にミラノで発行されたタロットデッキの復刻版です。(以前に紹介した MIDY のタロットのベースとなったデッキです。)

カードのサイズは 5cm×10cmとかなり小振りです。


Dotti


Dotti

本当に素朴な感じで、庶民がゲームに使用したんだろうなぁといった印象を受けます。

アイルランドの詩人で、イギリスの神秘主義秘密結社「黄金の夜明け団」のメンバーでもあったイェイツ(William Butler Yeats)も、Dotti のデッキのコピーを持っていたみたいです。

Les Tarots du Destin

詳細は分かりませんが、外箱やタロットの裏絵に有翼のスフィンクスが描かれたこのデッキは、1940-50年頃にパリで発行されたものだということです。


Destin


Destin


Destin

パリで発行されたとしても、愚者が蝶を追いかけている等の特徴から、双頭スタイルのピエモンテ系タロットであると言ってよいでしょう。

また、78枚のカード全てにアラビア数字とローマ数字で連番が振られています。これについては、「エッティラ版」の影響であるように思われますが、どうでしょうか?

Tarocchi Piemontesi c.1904 Armanino Genova

ピエモンテ系タロットは、1860年代以降は双頭スタイルが主流となってきます。

タロットの持つ象徴的な面をいくぶん損なっても、上下を気にしないで済むという利便性の方が勝ったということなんでしょうか?
例えばカード21「Il Mondo:世界」を見ると、本来表示されるべき「四つの生き物」の内、天使と鷲しか表示されてないです。


Geniva


Geniva


Geniva

双頭スタイルのピエモンテ系タロットに共通する特徴として、次のような点が挙げられます。

・愚者のカードで、愚者が蝶を追いかけている。
・杯のエースで、杯に花が生けられている。

いずれもこれまでに紹介した単頭スタイルのピエモンテ系タロットには見られなかった特徴です。

ただし、私はまだ保有していませんが、単頭スタイルのピエモンテ系タロットの中には、上記の特徴を備えたデッキも一部存在します。
おそらくは、そうしたデッキが双頭スタイルのピエモンテ系タロットのベースとなったのでしょう。

追記:
双頭スタイルと呼ばれるデッキにおいても、数札については単頭スタイルのデッキと変わりません。
カードの上部を反転させて下部ににつなぎ合わせるという改修は、大アルカナと小アルカナの宮廷カードにのみ施されています。

追記2:
双頭スタイルのピエモンテ系タロットのベースとなったのは、Vergnano のタロット(1830年頃)であると推測されます。

Tarocchi Piemontesi MIDY

こちらは MIDY という製薬会社のノベルティとして1963年に配布されたタロットで、なんと18.5㎝×36㎝という大きさです!

ベースとなっているのは、1800年代初期にミラノで発行された単頭スタイルのピエモンテ系タロットで、Tarocchino Milanese と呼ばれることもあるようです。

 

 

 

 

先に紹介したピエモンテ系タロットがマルセイユ版タロット「タイプ II 」に準じていたのに対して、「タイプ I」の特徴を有しています。でも。愚者に絡んでいるのは犬ですね。

追記:
ベースになったのは Teodoro Dotti によって発行されたデッキのようです。

追記2:
ミラノはロンバルディア州の州都です。(ピエモンテ州の州都はトリノ)
ここではピエモンテ系タロットという分類に含めていますが、ロンバルディのタロットとして分類されることもあります。
また、ミラノ版タロットと言った場合には、古典的なタロットである「ヴィスコンティ版」を意味することが多いみたいです。

追記3:
ミラノで「Tarocchini(tarocchino の複数形)」というゲームをするのに使用されたため、「Tarocchino Milanese」と呼ばれたみたいです。
「Tarocchini」はボローニャ地域で人気のトリックテイキングゲームで、ボローニャ系タロットのカードが62枚に減少していることとも関係ありそうです。

Antichi Tarocchi Liguri-Piemontesi di Giovanbattista Guala

ピエモンテ系タロットは、イタリアにおいては現代もポピュラーな存在であるらしく、様々な企業が販促用のノベルティとして顧客に配布していたりします。

今回紹介するのはファッション系企業のノベルティとして配布されたもので、Giovanbattista Guala が1840年に制作したデッキの復刻版です。


Guala


Guala

悪魔のお腹に描かれた顔とか、いくつか特徴を挙げることはできますが、単頭スタイル時代のピエモンテ系タロットは、ほぼほぼマルセイユ系タロットと言っていい感じですね。

単頭スタイルのピエモンテ系タロットには、大アルカナにローマ数字が記載されている版とアラビア数字が記載されている版とがありますが、ローマ数字が記載されている版の方が古いです。

一方、双頭スタイルのピエモンテ系タロットは、1860年代になってから普及したとのことです。

Antico Tarocco Ligure Piemontese

ピエモンテ版と呼ばれるタロットデッキの一つです。
ピエモンテ版タロットは、後に双頭スタイルが主流となりますが、初期の頃は単頭スタイルでした。


Robledo


Robledo

タロットは元々北イタリアからフランスに普及したと考えられているわけですが、フランスから逆輸入された「ドダル版」をベースにピエモンテ版が誕生したという説もあるようです。どうなのでしょうか?どちらが頭でどちらが尾かという、ウロボロスみたいな話ですね。

個人的には、広い意味ではマルセイユ系タロットに属していると言えるとは思うのですが、別個の系として捉えています。確かに共通点は多いですが、無視できない差異もあるように思われるので。(おそらくは、ボローニャ系タロットとのハイブリッド的な存在なのでしょう。)