Tarocchi Esotici

オーストリア・ハンガリー地域で1860年頃に作成されたゲーム用タロットの復刻版です。タイトルの「Tarocchi Esotici」を直訳すると、「エキゾチックなタロット」。発行元は Peruzzo というイタリアのカードメーカーです。

オリジナル版の詳細は不明ですが、先に紹介した Joh. N. Hofmann によって作成された「Industrie und Glück」と絵柄が似ています。
ただし、大アルカナに記載されている数字はアラビア数字となっています。また、小アルカナの数札はどのスートも1~10の10枚が揃っています。おそらくは、復刻版を作成する際に、オーストリア・ハンガリー地域以外でも使用しやすいように整えられたのではないでしょうか。


Tarocchi Esotici


Tarocchi Esotici


Tarocchi Esotici


Tarocchi Esotici

追記
上記の復刻版とほぼ同じものが、フランスのカードメーカーである Grimaud から「Tarot Allemand a deux Têtes」の名で発行されています。Grimaud による復刻版は、大アルカナに記載されている数字がローマ数字の版とアラビア数字の版の2種類が存在するようです。

Industrie und Glück

1815年にウィーンの Joh. N. Hofmann によって作成された「Industrie und Glück」と呼ばれるゲーム用タロットの復刻版です。大アルカナのカード2(II)に「Industrie und Glück」という碑文が描かれているため、そのような名で呼ばれています。発行元は Piatnik。

オーストリアやハンガリーなどの旧ハプスブルク君主国諸地域で使用されるゲーム用タロットは、大アルカナ22枚、小アルカナがコートカード16枚、数札16枚の計54枚というのが標準的な構成です。
小アルカナのスートはフランス式スートで、黒いスート(クラブ、スペード)の数札は[7、8、9、10]、赤いスート(ハート、ダイヤ)の数札は[4、3、2、1]という組み合わせになっています。赤いスートの数札では、数字が小さいほど強いというルールとなっています。


Hofmann


Hofmann


Hofmann


Hofmann


Hofmann


Hofmann

双頭スタイルなのですが、愚者以外の大アルカナの札では上下で描かれている内容が異なっています。もしかしたら、パラレルワールドなのでしょうか。(笑)
それにしても、面白い絵ですよね。神話とかをベースとしているのでしょうか。

追記
このデッキのオリジナル版は「Industrie und Glück」と呼ばれるタロットとしては最初期のもので、その後に普及したデッキとは絵柄がかなり異なっています。

Vandenborre Tarot Kaarten

1850年頃に作成された動物タロットの復刻版です。発行元は Vandenborre。ベルギーのカードメーカーです。

オリジナル版についての情報はほとんど得られませんでしたが、個人的には18世紀後半にコペンハーゲンの Jean Friedrich Mayer によって作成された動物タロットのリメイクではないかと推測しています。


Vandenborre


Vandenborre


Vandenborre


Vandenborre


Vandenborre


Vandenborre

追記
1800年頃にブリュッセルの P.A. Keusters によって作成された動物タロットもたいへんよく似ています。どうやら他にもそうしたデッキがいくつか作成されていたようで、ベルギー周辺での人気の高さをうかがわせます。

Die Verkehrte Welt

C. A. Müller によって1815年頃にベルリンで作成された動物タロットの復刻版です。タイトルの「Die Verkehrte Welt」を直訳すると、「間違った世界」。様々な動物が、人間のような姿でとてもユーモラスに描かれています。


Verkehrte Welt


Verkehrte Welt


Verkehrte Welt


Verkehrte Welt

他の動物タロットと同様に、小アルカナはフランス式スートで構成され、それぞれ1~10の数札と4枚のコートカード(ネイヴ、ナイト、女王、王)が揃っています。このデッキでは、コートカードは双頭スタイルで描かれています。


Verkehrte Welt


Verkehrte Welt

Russisches Tiertarock

オーストリアのカードメーカー Piatnik によって発行されている動物タロットの復刻版です。

オリジナル版についての情報は多くありませんが、1805年にニュルンベルクの Johann Matheus Backofen によって作成されたものだと考えられています。現存する初期のカードにロシアの税スタンプが押されているため、「ロシアの動物タロット」と名付けられたようです。


Piatnik2868


Piatnik2868


Piatnik2868


Piatnik2868

ドイツで誕生した動物タロット(ドイツ語:Tiertarock)は、ベルギーからロシアまで北ヨーロッパで普及して、タロットデッキのサブジャンルを形成しています。

追記
1780年にミュンヘンの Andreas Benedikt Göbl によって作成された動物タロットもかなり雰囲気が似ていて、このデッキのオリジナル版と混同されることもあるみたいです。

Das La Fontaine-Tarock

Peter Friedrich Ulrich によって1770年に作成されたタロットデッキの復刻版です。大アルカナは、ラ・フォンテーヌの寓話をテーマに作成されています。

フランスでコンヴェル版が作成されたのとほぼ同時期に、ドイツではこのようなゲーム用タロットが作成されていたんですね。


Fontaine


Fontaine


Fontaine


Fontaine

小アルカナはフランス式スートと呼ばれるクラブ、ハート、スペード、ダイヤをシンボルとする4つのスートで構成され、それぞれ1~10の数札と4枚のコートカード(ネイヴ、ナイト、女王、王)が揃っています。
コートカードに描かれている人物は、クラブはアフリカ、ハートはヨーロッパ、スペードはアメリカ、ダイヤはアジアをイメージしているようです。


Fontaine


Fontaine

意外かもしれませんが、タロットにフランス式スートを導入したのは、ドイツの動物タロットが最初だと考えられています。面白いですね。

追記
当ブログでは特に区別はしていませんが、ゲーム用タロットでは「アルカナ」という言葉はあまり使われないみたいです。大アルカナに相当するのが「切り札(トランプ)」となります。

追記2:
通常フランス式スートのゲーム用タロットでは、黒いスート(クラブ、スペード)の数札は数字が大きいほど強く、赤いスート(ハート、ダイヤ)の数札は数字が小さいほど強いというルールとなっています。

天正かるた

『銀花』という季刊誌(第百二十四号)の綴じ込み付録として提供された「天正かるた」の復刻版です。カードのサイズは概ね 4.2cm× 8.1cmと小振りですが、これでも原寸の 1.5倍だということです。

「天正かるた」は、「ドラゴンカード」と呼ばれる16世紀のポルトガルのカードを元に作成された日本最古のカルタです。現存するカードは1枚のみですが、版木が残っているため復刻が可能であったようです。


天正かるた


天正かるた


天正かるた


天正かるた


天正かるた

オリジナル版は、パウ(棍棒)、コッフ(聖杯)、イス(剣)、オウル(貨幣)をシンボルとする4つのスートで構成され、それぞれ1~9の数札と3枚のコートカード(女従者、騎士、王)が揃っています。この復刻版では、各スートの10の数札と道化札2枚が創作して加えられています。

Peter Flötner

Peter Flötner によって、1540年にニュルンベルクで作成されたプレイングカードの復刻版です。嬉しいことに、The Historic Games Shop で手頃な価格で提供されています。カードのサイズは概ね 5.7cm× 9cmと小振りです。

後にドイツ式スートと呼ばれることになる、ドングリ、ハート、木の葉、鈴をシンボルとする4つのスートで構成され、それぞれ2~10の数札(10は旗)と3枚のコートカード(下官、上官、王)が揃っています。2の数札は daus (deuce) と呼ばれ、それまでのエースと2の数札が統合されたような存在であるようです。


Flötner


Flötner


Flötner


Flötner

少し下品なシーンも含まれるユーモラスな絵の中には、風刺や皮肉といった要素も隠されているように思われます。

追記:
ドイツのプレイングカードでは、このデッキのように数札に絵が描かれることが珍しくありません。タロットでは1491年頃に作成された「ソラ・ブスカのタロット」が最初であると考えられていますが、それ以前にもそうしたデッキが存在します。

Rosenwald style cards

「ローゼンワルド・シート」と呼ばれる未裁断のシート(ワシントンD.C.のナショナル・ギャラリー所蔵)を元に復元されたタロットデッキです。作成者は Lady Heather Hall。カードのサイズは概ね 5cm× 8.7cmと小振りです。

オリジナル版は「ブダペスト・タロット」と同じく1500年頃に作成されたと考えられています。


Rosenwald


Rosenwald


Rosenwald


Rosenwald

元となるシートには不足しているカードもあるため、ある程度は推測に基づいています。例えば、カードの枚数がマルセイユ版タロットなどと同じ78枚であったかも定かではありません。ミンキアーテのようにもっと枚数が多かった可能性もあります。

追記:
彩色されていないため随分印象は異なりますが、Tarot Sheet Revival による復刻版も発行されています。こちらはフルデッキで82枚の構成となっています。

Tarot de Bvdapest

「ブダペスト・タロット」と呼ばれる木版タロットです。ブダペストの美術館などに保管されている未裁断のシートを元に、Tarot Sheet Revival によって復元されました。

オリジナル版は1500年頃(15世紀後半から16世紀初頭)に、イタリアのベネチアあるいはフェラーラで作成されたものと考えられています。


Bvdapest


Bvdapest


Bvdapest

この復刻版では、赤と黄がとても印象的ですね。

「貧者の聖書」(Biblia Pauperum)と同様に、庶民向けの安価な木版画で作成されたこの作品には、手書きの豪華な作品である「ヴィスコンティ・スフォルツァ版」などとはまた違った魅力があります。

追記:
大アルカナの各カードに割り振られた番号は、マルセイユ版タロットやウェイト版タロットとは少し異なっています。

Bvdapest