Rosenwald style cards

「ローゼンワルド・シート」と呼ばれる未裁断のシート(ワシントンD.C.のナショナル・ギャラリー所蔵)を元に復元されたタロットデッキです。作成者は Lady Heather Hall。カードのサイズは概ね 5cm× 8.7cmと小振りです。

オリジナル版は「ブダペスト・タロット」と同じく1500年頃に作成されたと考えられています。


Rosenwald


Rosenwald


Rosenwald


Rosenwald

元となるシートには不足しているカードもあるため、ある程度は推測に基づいています。例えば、カードの枚数がマルセイユ版タロットなどと同じ78枚であったかも定かではありません。ミンキアーテのようにもっと枚数が多かった可能性もあります。

追記:
彩色されていないため随分印象は異なりますが、Tarot Sheet Revival による復刻版も発行されています。こちらはフルデッキで82枚の構成となっています。

Tarot de Bvdapest

「ブダペスト・タロット」と呼ばれる木版タロットです。ブダペストの美術館などに保管されている未裁断のシートを元に、Tarot Sheet Revival によって復元されました。

オリジナル版は1500年頃(15世紀後半から16世紀初頭)に、イタリアのベネチアあるいはフェラーラで作成されたものと考えられています。


Bvdapest


Bvdapest


Bvdapest

この復刻版では、赤と黄がとても印象的ですね。

「貧者の聖書」(Biblia Pauperum)と同様に、庶民向けの安価な木版画で作成されたこの作品には、手書きの豪華な作品である「ヴィスコンティ・スフォルツァ版」などとはまた違った魅力があります。

追記:
大アルカナの各カードに割り振られた番号は、マルセイユ版タロットやウェイト版タロットとは少し異なっています。

Bvdapest

Tarocchi Sola Busca

1491年頃にミラノで作成され、ソラ・ブスカ家に伝わるタロットデッキの復刻版です。カードのサイズは概ね 7.7cm×14.5cmと大きめです。発行元は Lo Scarabeo。

オリジナル版は、現存するタロットとしては「ヴィスコンティ・スフォルツァ版」に次いで古く、78枚のカードが全て揃っていることが確認できたデッキとしては最古のものとなります。
(1465年頃に作成された「マンテーニャ・タロット」の方が古いのですが、通常はタロットとは別のものとして扱われています。)

大アルカナ22枚、小アルカナ56枚(= 14枚 × 4スート)という構成や、スートの種類(棒、杯、剣、金貨)は、現代の標準的なタロットデッキと同じです。
ただし、大アルカナの内容は全く異なっていて、描かれているのは古代ローマ人やバビロニアの王です。数札にも全て絵が描かれていて、ウェイト版タロットが作成された際に参考にされたという話も伝わっています。


Sola Busca


Sola Busca


Sola Busca


Sola Busca


Sola Busca


Sola Busca


Sola Busca

I Tarocchi del Mantegna

「マンテーニャ・タロット」と呼ばれるデッキの復刻版です。Il Meneghello によるハンドメイドで、とても味わい深い作品となっています。カードのサイズは概ね 9.5㎝×16.5㎝と大きめです。

オリジナル版は1465年頃に作成されましたが、作者は不明です。ちょっと紛らわしいですが、イタリア・ルネサンス期の著名な画家アンドレア・マンテーニャ(Andrea Mantegna)によって創作されたものではないようです。

マルセイユ版タロットに代表される現代の標準的なタロットデッキとは構成が全く異なるため、「タロット風デッキ」と呼ばれたりもします。具体的には、以下のような10枚毎の5つのグループで構成されています。

階級 グループの概要
E  1~10 人間の社会階級
D 11~20 アポローンと 9柱の女神
C 21~30 人文科学と自然科学
B 31~40  3つの普遍的原理(光、時間、空間)と 7つの徳
A 41~50  7惑星と天球

しかしながら、個々のカードを眺めると、マルセイユ版タロット等との類似性を強く感じさせるカードも少なくありません。


Mantegna


Mantegna


Mantegna


Mantegna


Mantegna


Mantegna

The Marziano Tarot

「ヴィスコンティ・スフォルツァ版」より前に作成されたけれど現存しないタロットデッキを、残された手紙に記述された内容などから Robert M Place が再生しました。

オリジナル版は、ミラノ公爵のフィリッポ・マリア・ヴィスコンティ(Filippo Maria Visconti)の命により、1412年~1425年の間に作成されたと考えられています。


Marziano


Marziano


Marziano


Marziano

大アルカナ(16枚)には、ギリシャ・ローマ神話の神々が描かれています。小アルカナは、鷲、フェニックス、コキジバト、鳩をシンボルとする4つのスートで構成され、それぞれ10枚の数札と女王と王が揃っています。併せて64枚のセットになります。

追記:
大アルカナに描かれた神々は以下のとおりです。

名称 カタカナ表記
I Giove ユピテル
II Giunone ユーノー(ユノー)
III Pallas パラス(アテナの別名)
IV Venus ウェヌス(ヴィーナス)
V Appolo アポローン(アポロン、アポロ)
VI Nettuno ネプトゥーヌス(ネプチューン)
VII Diana ディアーナ(ディアナ、ダイアナ)
VIII Bacco バッコス(バッカス)
IX Mercurio メルクリウス(マーキュリー)
X Marte マールス(マルス)
XI Vesta ウェスタ
XII Ceres ケーレス(ケレス)
XIII Ercole ヘーラクレース(ヘラクレス)
XIV Eolo アイオロス
XV Daphne ダプネー(ダフネ)
XVI Cupido クピードー(クピド、キューピッド)

追記2:
Robert M Place によって再生されたタロットデッキは、かなりポップな感じに仕上がってます。これはこれで気に入っているのですが、実際のオリジナル版は「ヴィスコンティ・スフォルツァ版」やドイツのプレイングカード「Ambraser Hofjagdspiel」のように、もう少し厳かな感じであったと思われます。また、おそらくカードのサイズももう少し大きかったでしょう。

追記3:
1425年は、フィリッポ・マリア・ヴィスコンティの娘、ビアンカ・マリア・ヴィスコンティ(Bianca Maria Visconti)が誕生した年です。オリジナル版は、彼女の誕生を祝う品々の一つであったと考えられます。