Aluette nouveau jeu de cartes

前回と同様に「Aluette」と呼ばれるカードゲームのために作成されたデッキです。いずれも発行元は Grimaud ですが、今回紹介するパッケージと裏絵が赤いタイプの方が新しい版で、現在も販売されています。

最大の違いは、カードの右下に強さを示す数字が記載されていることです。また、主なカードには名称も記載されています。こちらの方が、初心者には分かりやすいですね。


Aluette Nouveau


Aluette Nouveau


Aluette Nouveau


Aluette Nouveau

No. カード 名称
1 貨幣3 monsieur(紳士)
2 杯3 madame(淑女)
3 貨幣2 le borgne(片目)
4 杯2 la vache(牝牛)
5 杯9 grand neuf(大きな9)
6 貨幣9 petit neuf(小さな9)
7 棍棒2 deux de chêne(オークの2)
8 剣2 deux d’écrit(文書の2)
9 棍棒1 AS(エース)
杯1
剣1
貨幣1

Aluette jeu de 48 cartes

「Aluette」と呼ばれるカードゲームのために作成されたデッキです。現在はフランス西部の一部の地域だけでプレイされているゲームのようです。

当デッキは、棍棒、杯、剣、貨幣の4つのスートで構成され、それぞれ1~9の数札と3枚のコートカード(ネイヴ、女騎士、王)が揃っています。カードのサイズは概ね 5.7cm× 8.7cmと少し小振りです。


Aluette


Aluette


Aluette


Aluette

「Aluette」には特別に強いカードが8枚設定されていて、その内の最も強い4枚が「luettes」と呼ばれます。

グループ カード 名称
luettes 貨幣3 monsieur(紳士)
杯3 madame(淑女)
貨幣2 le borgne(片目)
杯2 la vache(牝牛)
doubles 杯9 grand neuf(大きな9)
貨幣9 petit neuf(小さな9)
棍棒2 deux de chêne(オークの2)
剣2 deux d’écrit(文書の2)

上記の8枚を除けば、1(エース)が最も強く、コートカードよりも上位に位置づけられています。それ以外の数札はコートカードよりも弱く、スートの種類にかかわらず、数字が大きいほど強いという設定になっています。

Gnavspil

デンマークで「Gnav」や「Gnavspil」などの名で呼ばれるカードゲームのために作成されたデッキです。以前に紹介したイタリアの「Cuccù」やスウェーデンの「Kille」と同系列のカードゲームのための専用デッキとなります。


Gnavspil


Gnavspil


Gnavspil


Gnavspil

当デッキは、21種のカードが各2枚の計42枚という構成となっています。21種のカードの内8枚は絵札。残りはアラビア数字の0とI~XIIまでのローマ数字が記載されています。

名称
(道化)
(フクロウ)
(花瓶)
0~XII
(家)
(馬)
(猫)
(騎兵)
(カッコウ)

「家」のカードに記載されている文字は発行元なのでしょうか?同カード以外の絵札には、タイトルも数字も記載されていません。

デンマークでこのゲームが普及したのはスウェーデンの「Kille」よりもかなり後みたいですが、内容的にはこちらの方がイタリアの「Cuccù」との差異が小さいですね。
なお、「Gnav」の名はイタリア語での猫の鳴き声「gnao」が元となっているようです。

Kille

スウェーデンで「Kille」や「Kambio」などの名で呼ばれるカードゲームのために作成されたデッキの復刻版です。オリジナル版は1890年頃に作成されたと考えられています。


Kille


Kille


Kille


Kille

前回紹介したイタリアの「Cuccù」と同系列のカードゲームのための専用デッキとなりますが、スウェーデンで作成されたこちらのデッキは、21種のカードが各2枚の計42枚という構成となっています。
また、カードにはローマ数字もアラビア数字も記載されていません。

名称
Arlequin(アルルカン、即興喜劇に登場する道化役)
Blaren(愚者?)
(花瓶)
(花輪)
1~12
Wärdshus(宿屋)
Cavall(騎士)
Husu(豚)
Husar(歩兵)
Cucu(カッコウ)

イタリアでは「猫」が描かれていたカードが、「豚」に置き換わっています。うーん、なぜでしょう?

また、「Arlequin」のカードは最低位ではなく、最高位のカードとして扱われることもあるようです。というか、最高位のカードとして扱われることの方が多いようです。この場合は、「Blaren」が最低位のカードとなります。
このため、このゲームが「Arlequin」の名で呼ばれることもあるようです。「Kille」というゲーム名は「若い男性(もしくは少年)」を意味しますが、どうやらこれも「Arlequin」のことを指しているらしいです。

Cuccù

イタリアで「Cu cù」や「Cucco」などの名で呼ばれるカードゲームのために作成されたデッキです。発行元は Masenghini。

ゲームそのものはフランスが発祥のようですが、専用のデッキが作成されたのはイタリアが最初だと考えられています。このゲームはその後、ドイツ、オーストリア、ハンガリー、スウェーデン、デンマーク、ノルウェーなどで、少しずつ形を変えながら普及しています。
また、日本でもクランペールというメーカーが「ククカード」の名でデッキを作成・販売しています。


Cuccù


Cuccù


Cuccù

当デッキは、20種のカードが各2枚ずつ、計40枚という構成となっています。通常のプレイングカードのようなスートは存在しません。
また、20種のカードの内15枚はI~XVまでのローマ数字が記載されていて、残りの5枚がローマ数字の記載されていない絵札なのですが、後者の方がランクが下の扱いとなっている点も変わっています。「Matto」が最低位で、「XV: Cucco」が最高位のカードとなります。

名称
Matto(愚者)
(ライオン)
Mascherone Manco Di Secchia(サテュロスの顔?)
Secchia Meno Di Nulla(バケツ)
Nulla(何もないの意)
I~X
XI Fermatevi Alquanto(宿屋)
XII Gnao(猫)
XIII Salta(馬)
XIV Hai Pigliato Bragon(バラを持つ兵士?)
XV Cucco(カッコウ)

なお、ライオンのカードは元々のゲームにはなかったのではないかという説もあります。Masenghini に先立ち Solleone(ソル・レオーネ、太陽の獅子の意)というカードメーカーが同様のデッキを発行しているのですが、このメーカーのシンボルを描いたカードがゲーム用のカードとして取り込まれてしまったのではないかというものです。
個人的にはかなり可能性の高い説ではないかと考えています。イタリア以外の国のデッキでは、ライオンに相当するカードは見当たりません。

追記:
「Nulla」をゼロだと考えても問題ありませんが、ローマ数字にゼロは存在しません。また、蛇足となりますが、プログラミングにおいては、ヌル(Null)とゼロは明確に区別されます。

追記2:
このゲームの詳しい歴史は分かっていませんが、1770年~1780年頃にベネチアで作成されたと思われるデッキがフランス国立図書館に保管されています。同デッキにはライオンのカードは存在しません。

また、1981年に Solleone により発行されたデッキは、1820年~1846年頃にミラノで Gumppenberg が発行したデッキの復刻版です。Gumppenberg のオリジナル版にライオンのカードが存在したのかどうか知りたいところです。

追記3:
カードを眺めていたら、「バケツ」を真横から見たら「サテュロスの顔」に、真上から見たら「Nulla」に見えるんじゃないの?という気がしてきました。はい、個人の感想です。(笑)

Dashavatara Ganjifa

インドの伝統的なプレイングカードである「Ganjifa(ガンジファ)」には様々な種類がありますが、今回紹介する「Dashavatara Ganjifa」は、以前に紹介した「Mughal Ganjifa」に次いでポピュラーな存在だと言えるでしょう。

「Dashavatara(ダシャーヴァターラ)」は、ヒンドゥー教の主神の一であるヴィシュヌの10の主要アバターを指します。
「Dashavatara Ganjifa」は、10のスートで構成され、それぞれ1~10の数札と2枚のコートカードが揃っているのですが、このコートカードに「Dashavatara」が描かれているのです。


Dashavatara


Dashavatara


Dashavatara


Dashavatara


Dashavatara

ヴィシュヌの10の主要アバターは、通常以下のとおりです。

名称
1 マツシャ(魚)
2 クールマ(亀)
3 ヴァラーハ(猪)
4 ナラシンハ(人獅子)
5 ヴァーマナ(矮人)
6 パラシュラーマ(賢者)
7 ラーマ(王子)
8 クリシュナ
9 ブッダ(覚者)
10 カルキ(カリ・ユガの最後に出現するとされる)

ただし、地域によって一部が別のアバターに入れ替わっていたり、追加されていたりすることもあります。
今回紹介するデッキはオリッサ州で作成されたものであるらしく、「クリシュナ」と「ブッダ」が、「バララーマ」と「ジャガンナート」に入れ替わっています。

上記の画像では、1段目左から「マツシャ/魚」、「クールマ/亀」、「ヴァラーハ/貝殻」、2段目左から「ナラシンハ/チャクラ(装飾されたディスク)」、「ヴァーマナ/瓶」、3段目左から「パラシュラーマ/斧」、「ラーマ/弓と矢」、「バララーマ/棍棒」、4段目左から「ジャガンナート/ハスの花」、「カルキ/剣」の順に並べています。

1段目と2番目のスートは「Kambar suits」(数札は数字が大きいほど強い)、3段目と4番目のスートは「Bishbar suits」(数札は数字が小さいほど強い)となります。

Ganjapa

「Ganjapa」と呼ばれるインドのオリッサ州(英語: Odisha、旧名称の英語: Orissa)の伝統的なプレイングカードです。
前回紹介した「Mughal Ganjifa」の一種ではあるのですが、オリッサ州ではインドの他の地域とはかなり異なる発展を遂げました。

基本的にはスートの種類やカードの枚数は変わりませんが、コートカードの大臣は叙事詩『マハーバーラタ』(Mahābhārata)の英雄アルジュナ(Arjuna)、王はクリシュナ(Krishna)の化身で9種の動物からなる生き物 Navagunjara に置き換えられています。


Ganjapa


Ganjapa


Ganjapa


Ganjapa

上記の画像では上段左から「金貨」、「手形」、「布」、「ハープ」、下段左から「銀貨」、「クラウン」、「奴隷」、「剣」の順に並べています。

追記:
「Ganjapa」だけでなく、他の地域の「Mughal Ganjifa」についても言えることですが、スートの数が8ではなく、10や12などのデッキも存在するようです。その場合も、各スートが1~10の数札と2枚のコートカードで成り立っている点は変わりません。

Mughal Ganjifa

「Ganjifa」と呼ばれるインドの伝統的なプレイングカードの一種です。

起源は不明ですが、今日知られている「Ganjifa」はペルシャで始まったと考えられ、16世紀のムガル皇帝の下でインドで人気を博しました。宮廷では宝石や象牙などの貴重な材料を用いた贅沢なカードデッキが作られたようです。
ゲームは後に一般の人々にも広まり、木材やヤシの葉、硬い布などの材料を用いてカードデッキが作られました。

「Ganjifa」には地域などによって様々なバリエーションがありますが、「Mughal Ganjifa」はペルシャで使用された元のパターンに最も近いタイプであると考えられています。ただし、カードを円形としたのはインドのオリジナルです。
「金貨」、「手形」、「商品(布)」、「ハープ」、「銀貨」、「クラウン」、「奴隷」、「剣」をシンボルとする8つのスートで構成され、それぞれ1~10の数札と2枚のコートカード(大臣、王)が揃っています。


Mughal Ganjifa


Mughal Ganjifa


Mughal Ganjifa


Mughal Ganjifa


Mughal Ganjifa

上記の画像では上段左から「金貨」、「手形」、「商品(布)」、「ハープ」、下段左から「銀貨」、「クラウン」、「奴隷」、「剣」の順に並べています。
上段の4スートは「Kambar suits」と呼ばれ、数札は数字が大きいほど強く、下段の4スートは「Bishbar suits」と呼ばれ、数札は数字が小さいほど強いというルールとなっています。

追記:
ペルシャから伝わったプレイングカードを円形にしたのはインドのオリジナルですが、円形のプレイングカードを世界で最初に作成したのがインドだという意味ではありません。
円形の Ganjifa が普及したのは19世紀以降のようですが、以前に紹介した「Karten Spiel des Meisters PW」のように、ヨーロッパにもそれより前から円形のプレイングカードは存在します。

追記2:
インドのガンジファ(Ganjifa)もヨーロッパのプレイングカードも共に、トルコのマムルークカード(Mamluk cards)を祖先とするのではないかと考えられているようです。
ムガル帝国の “Mughal” はモンゴル(Mongol)を意味しますが、彼らは11世紀にペルシャに侵入したトルコ人の子孫であり、およそ200年後にモンゴルによって同じ土地から追い出されました。

天正かるた

『銀花』という季刊誌(第百二十四号)の綴じ込み付録として提供された「天正かるた」の復刻版です。カードのサイズは概ね 4.2cm× 8.1cmと小振りですが、これでも原寸の 1.5倍だということです。

「天正かるた」は、「ドラゴンカード」と呼ばれる16世紀のポルトガルのカードを元に作成された日本最古のカルタです。現存するカードは1枚のみですが、版木が残っているため復刻が可能であったようです。


天正かるた


天正かるた


天正かるた


天正かるた


天正かるた

オリジナル版は、パウ(棍棒)、コッフ(聖杯)、イス(剣)、オウル(貨幣)をシンボルとする4つのスートで構成され、それぞれ1~9の数札と3枚のコートカード(女従者、騎士、王)が揃っています。この復刻版では、各スートの10の数札と道化札2枚が創作して加えられています。

Peter Flötner

Peter Flötner によって、1540年にニュルンベルクで作成されたプレイングカードの復刻版です。嬉しいことに、The Historic Games Shop で手頃な価格で提供されています。カードのサイズは概ね 5.7cm× 9cmと小振りです。

後にドイツ式スートと呼ばれることになる、ドングリ、ハート、木の葉、鈴をシンボルとする4つのスートで構成され、それぞれ2~10の数札(10は旗)と3枚のコートカード(下官、上官、王)が揃っています。2の数札は daus (deuce) と呼ばれ、それまでのエースと2の数札が統合されたような存在であるようです。


Flötner


Flötner


Flötner


Flötner

少し下品なシーンも含まれるユーモラスな絵の中には、風刺や皮肉といった要素も隠されているように思われます。

追記:
ドイツのプレイングカードでは、このデッキのように数札に絵が描かれることが珍しくありません。タロットでは1491年頃に作成された「ソラ・ブスカのタロット」が最初であると考えられていますが、それ以前にもそうしたデッキが存在します。