Gnavspil

デンマークで「Gnav」や「Gnavspil」などの名で呼ばれるカードゲームのために作成されたデッキです。以前に紹介したイタリアの「Cuccù」やスウェーデンの「Kille」と同系列のカードゲームのための専用デッキとなります。


Gnavspil


Gnavspil


Gnavspil


Gnavspil

当デッキは、21種のカードが各2枚の計42枚という構成となっています。21種のカードの内8枚は絵札。残りはアラビア数字の0とI~XIIまでのローマ数字が記載されています。

名称
(道化)
(フクロウ)
(花瓶)
0~XII
(家)
(馬)
(猫)
(騎兵)
(カッコウ)

「家」のカードに記載されている文字は発行元なのでしょうか?同カード以外の絵札には、タイトルも数字も記載されていません。

デンマークでこのゲームが普及したのはスウェーデンの「Kille」よりもかなり後みたいですが、内容的にはこちらの方がイタリアの「Cuccù」との差異が小さいですね。
なお、「Gnav」の名はイタリア語での猫の鳴き声「gnao」が元となっているようです。

Kille

スウェーデンで「Kille」や「Kambio」などの名で呼ばれるカードゲームのために作成されたデッキの復刻版です。オリジナル版は1890年頃に作成されたと考えられています。


Kille


Kille


Kille


Kille

前回紹介したイタリアの「Cuccù」と同系列のカードゲームのための専用デッキとなりますが、スウェーデンで作成されたこちらのデッキは、21種のカードが各2枚の計42枚という構成となっています。
また、カードにはローマ数字もアラビア数字も記載されていません。

名称
Arlequin(アルルカン、即興喜劇に登場する道化役)
Blaren(愚者?)
(花瓶)
(花輪)
1~12
Wärdshus(宿屋)
Cavall(騎士)
Husu(豚)
Husar(歩兵)
Cucu(カッコウ)

イタリアでは「猫」が描かれていたカードが、「豚」に置き換わっています。うーん、なぜでしょう?

また、「Arlequin」のカードは最低位ではなく、最高位のカードとして扱われることもあるようです。というか、最高位のカードとして扱われることの方が多いようです。この場合は、「Blaren」が最低位のカードとなります。
このため、このゲームが「Arlequin」の名で呼ばれることもあるようです。「Kille」というゲーム名は「若い男性(もしくは少年)」を意味しますが、どうやらこれも「Arlequin」のことを指しているらしいです。

Cuccù

イタリアで「Cu cù」や「Cucco」などの名で呼ばれるカードゲームのために作成されたデッキです。発行元は Masenghini。

ゲームそのものはフランスが発祥のようですが、専用のデッキが作成されたのはイタリアが最初だと考えられています。このゲームはその後、ドイツ、オーストリア、ハンガリー、スウェーデン、デンマーク、ノルウェーなどで、少しずつ形を変えながら普及しています。
また、日本でもクランペールというメーカーが「ククカード」の名でデッキを作成・販売しています。


Cuccù


Cuccù


Cuccù

当デッキは、20種のカードが各2枚ずつ、計40枚という構成となっています。通常のプレイングカードのようなスートは存在しません。
また、20種のカードの内15枚はI~XVまでのローマ数字が記載されていて、残りの5枚がローマ数字の記載されていない絵札なのですが、後者の方がランクが下の扱いとなっている点も変わっています。「Matto」が最低位で、「XV: Cucco」が最高位のカードとなります。

名称
Matto(愚者)
(ライオン)
Mascherone Manco Di Secchia(サテュロスの顔?)
Secchia Meno Di Nulla(バケツ)
Nulla(何もないの意)
I~X
XI Fermatevi Alquanto(宿屋)
XII Gnao(猫)
XIII Salta(馬)
XIV Hai Pigliato Bragon(バラを持つ兵士?)
XV Cucco(カッコウ)

なお、ライオンのカードは元々のゲームにはなかったのではないかという説もあります。Masenghini に先立ち Solleone(ソル・レオーネ、太陽の獅子の意)というカードメーカーが同様のデッキを発行しているのですが、このメーカーのシンボルを描いたカードがゲーム用のカードとして取り込まれてしまったのではないかというものです。
個人的にはかなり可能性の高い説ではないかと考えています。イタリア以外の国のデッキでは、ライオンに相当するカードは見当たりません。

追記:
「Nulla」をゼロだと考えても問題ありませんが、ローマ数字にゼロは存在しません。また、蛇足となりますが、プログラミングにおいては、ヌル(Null)とゼロは明確に区別されます。

追記2:
このゲームの詳しい歴史は分かっていませんが、1770年~1780年頃にベネチアで作成されたと思われるデッキがフランス国立図書館に保管されています。同デッキにはライオンのカードは存在しません。

また、1981年に Solleone により発行されたデッキは、1820年~1846年頃にミラノで Gumppenberg が発行したデッキの復刻版です。Gumppenberg のオリジナル版にライオンのカードが存在したのかどうか知りたいところです。

追記3:
カードを眺めていたら、「バケツ」を真横から見たら「サテュロスの顔」に、真上から見たら「Nulla」に見えるんじゃないの?という気がしてきました。はい、個人の感想です。(笑)